おとなしい沸騰

 

「なんておとなしく沸騰するのかしら」

 

妻がキッチンで呟く。

 

鍋に水を入れて火力抑え目で火をかけていて沸騰しても暫く気づかなかったようだ。

 

目を転じて職場を見渡してみても何かをきっかけに沸騰する人はいる。

 

高い音を立ててヤカンを沸騰させるように激昂する人がいれば、静かに徐々に熱量を上げていく人もいる。

 

周りの人を驚かせることなく、静かに、長く、蒸気機関を働かせられるようにおとなしい沸騰を心掛けたい。

 

怒りというエネルギーの有効活用のためにも。