月一雑誌 −CARTA−

「今までに一度も買ったことのない雑誌を買ってみる」



今年の月一企画の第3回目には、



「CARTA 」(カルタ)を選んでみた。



歴史群像4月号別冊2012年陽春号の内容は、「日本美術入門」。



「日本らしさ」「日本人の感性」ということをここ数日考えてきた流れがあり、表紙の「完全保存版 世界に誇る<日本美術>の歴史がこれ1冊で!」を見た瞬間、吸い寄せられるように手に取っていた。(尤も、こういった企画がなければ買うこともないのだけれど)ちなみに「[CARTA]は世界と日本の伝統文化、偉大な芸術・思想・宗教、歴史上のさまざまな人物と出来事―これらを、今までにない切り口で取り上げていきます。」という雑誌とのこと。



早速、今号の内容を「鑑賞」してみよう。



全体の構成は、第1特集に表題の「日本美術入門」、第2特集に「春の弘前城」が取り上げられ、連載には「日本 もうひとつの風景」「学者今を生きる」「職人一趣 手作りランドセル」、付録に「城郭のひみつ 学研まんが+図解」が付いていた。



雑誌の主題である「日本美術入門」は 絢爛・幽玄・ダイナミック!という副題がつけられ、その趣旨と特徴がわかりやすく説明されている。そのまま(一部)掲載させていただこう。



「昨今の仏像ブームに言及するまでもなく、日本の伝統的な美術作品に対して強い関心を抱く人は多い。仏像にしても絵画にしても、古来伝えられてきた日本の美術作品には、われわれ日本人をひきつけ、安堵させるなにかがあるに違いない。日本人にとって、”美しい”とはどういうことか? 本特集では、世界に類のない独特な進化を遂げた日本の美術を通して、日本的な”美”の正体を探ってみたい。」



跡見学園女子大学教授の矢島新先生が「日本美術の”表情”」というタイトルで日本美術の全体像をわかりやすく解説してくれている。



「日本美術と聞いてどのようなイメージを思い浮かべられるだろうか。雪舟の水墨山水画をイメージする方もおられるだろうし、写楽や北斎の浮世絵を思い浮かべる方もおられるに違いない。西欧の古典時術の場合は、ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」のような写実的な表現がすぐにイメージされるだろうが、モノクロームの水墨画と華やかな浮世絵ではかなり印象が異なるし、全体像が浮かびにくいかもしれない。」



源氏物語絵巻」や北斎の「富嶽三十六景神奈川沖波裏」を例に挙げ、リアリズムが必ずしも日本人には重要でなかったという点を指摘。その理由にヨーロッパや中国と比較すると均質的な民族や文化を持っていたことがあり、「すべてを言わずとも互いに理解しあえる狭い世間で生きていた日本の文化人にとって、造形の基本たるべきリアリズムは必ずしも重要ではなかった。むしろその上にプラスする何かが求められたのだろう。」と語っている。



また、「人の技の完璧さよりも自然の風合いを重視する”わび”の美学や、古典に関する教養に立脚した見立などは、日本美術の敷居を高くしているわかりにくい要素かもしれない。しかし、一度敷居を跨いでしまえば、世界基準の普遍的な表現にはない奥深い世界が広がっている。そうしたリアリズムや人為の完成度を超える部分にこそ日本美術の本領はある。グローバル化が進み、西洋発の価値観に世界が覆われようとしている現代において、周辺ならではのオリジナリティは、大切に守り続けるべきだろう。」と締めくくる。



雑誌は、その後、時代ごとの代表作を取り上げ、解説を加えたり、「仏像ができるまで」「日本画ができるまで」など、当時の技術を現代に再現して実際に作品をつくるという企画があったり、中でも「日本美術を救った男」は、ボストン美術館にいつかは足を運びたい!という気にさせられる充実の内容。解説文を紹介しよう。「明治のはじめ、先進文明を取り入れるべく西欧化を急ぐあまり、連綿と続いてきた日本美術の伝統は一顧だにされず、破棄され、消滅の危機を迎えていた。それを救ったのは、日本人ではなく、アメリカから来たひとりの青年だったー日本美術の救世主、フェノロサの偉大な足跡を紹介する。」



この内容に付録(城郭のひみつ 学研まんが+図解)も付いて税込み680円とは驚くほどの安さ。



日本美術の真髄に触れるための額にしては失礼に感じるほど。



次回号は「日本建築史」。法隆寺からスカイツリーまでを扱うとのこと。「この5月にいよいよオープンする東京スカイツリー。ここにいたるまで、日本の建築技術はどのように発達し、また伝統を継承し続けたのか。全国の神社仏閣、有名建築続々登場!」



これもまた惹かれる内容ではないか。



この2冊だけで日本美術にはまってしまうかもしれない。



それもまた乙なものである・・・



月一雑誌 バックナンバー


月一雑誌 −AUTOCAR JAPAN− http://d.hatena.ne.jp/norio373/20120229
月一雑誌 −pen−      http://d.hatena.ne.jp/norio373/20120131